死にたがりな君と、恋をはじめる

レイの言葉に私は大きく見開いて、小さく声を漏らした。







理由なら、ある……?







理由なんて、私でも思いつかない。








レイがハッタリを言っているだけ……?







身を固めてレイを凝視していると、レイはこちらを真剣なまなざしで見つめ返す。











あまりの緊張感にゴンドラ内に沈黙が流れて、心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。










キーンとした音で耳の中が痛くて、それでも声を発することができなくて喉がひりついたように痛い。












聞きたくないのに。













……聞きたくないはずなのに。








自分の本能が、細胞が。







――彼の言葉を待っている。






















『奈月が自殺しようとする理由って……家族でしょ』







「ッ……!」













レイが静かな声を発して、それがきっかけで緊張が緩む。












その言葉に肩が大きく震えてしまって、それはもう認めてしまっているのと、同じで。












レイの語尾にはついに疑問符が取り除かれていて、これが彼の出した結論なのだと、気が付いた。












「ち、違――…………」







訂正を入れたくても、喉のひりつきは急に治るものではなくて、私は声を出せずにただ息を漏らした。








早く、早く何かを言わないと……言って、本音を綺麗に覆いつくさないと。







思えば思うほど焦ってしまって、それでも私は言い訳を探す。





レイはもう迷っていない。







これが真実だと確信して、もうその考えを覆してはくれないだろう。







そう、わかっていても。











何か言い訳を口に出さずにはいられなかった。
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