死にたがりな君と、恋をはじめる
『そこで俺は思ったんだよ』
「え……?」
『いじめがつらいと思っている人が、いじめをしている張本人を怖がらないって言うのは……おかしいなって』
「……っあ」
レイの静かな声に、私は大きく目を見開いた。
まるで図星をつかれたときのように心臓がどきんと大きく跳ねて、小さく息を吐いた。
「べ、つに……。全員が全員怖がるわけじゃ、ないんじゃない?」
なんとか誤魔化そうと苦笑いを浮かべたけど、声はどうしようもなく、情けなく震えていて、レイはちらりとこちらを見た。
その澄んだ綺麗な瞳はすべてを見透かしているようで、私は目を合わせることができずにゆるゆると俯いた。
『確かに全員が怖がるわけじゃないにしろ。憎むか、怖がるかはするはずなんだ。少なくとも俺が出会ったいじめに悩んでいて自殺しようとしている子は、皆そうだった。奈月は……そうじゃないの?』
「ッ……」
よどみのない声に、ひゅっと息を細く吸い込んだ。
心臓がドクドクと嫌な音を立てて、ギュッと胸のあたりの服を握りしめた。
一応疑問符を使っているけどそんなの建前で、きっとレイはもう確信している。
首筋に冷たい汗が流れて、私はフッと笑みを浮かべた。
……自分、動揺しすぎ。
大丈夫、まだ大丈夫。
私はそう繰り返すとふーっと息を吐いた。
大きく息を吐いてなおも足掻こうと、レイに向き直った。
「私が自殺をしようとしたのは……いじめが原因だよ。だってそれ以外に理由なんてないでしょう?」
深呼吸をして心を落ち着かせ、アハハと乾いた笑みを浮かべた。
「……それとも。レイは私が自殺理由がほかにあるとでも言いたいの?」
レイはじっとこちらを見て、それから唇を小さく動かした。
『理由なら、あるよ』
「……え?」