死にたがりな君と、恋をはじめる
『どーしたの。奈月。早く帰ろうよ』
そういうレイの瞳に先ほどまでの陰りはなくて、私は沈黙する。
……レイはあえて普通に接してきているんだろう。
私に何も悟らせないように。
レイはきっと私が何か疑問を持っていることに気が付いている。
そのうえでこんな態度をとってくるというのは、放っておいてほしいということだろうか。
そんな考えに行き着いた私は隣まで歩いて行って、それからレイに明るく笑いかけた。
「何でもない。レイ、早く帰ろうか」
『あ、うん』
明るい雰囲気の私にレイは少しパチパチと目を瞬かせ、それからふわりと優しく微笑んだ。
行きとは違って帰りは電車で帰ることにした。
電車に乗ってから私はふと声を漏らした。
「……ねぇ、レイ。私さ……」
『ん?』
ぼそりと呟いた私に、レイは少し首を傾げた。
「私さ。……誠おばさんに今までのこと、全部言おうと思う」
『……っえ?』
レイが小さく息を飲み込んで、反射的にこちらを見る。
目が合って、私はこくんと頷いた。
もう、隠すのはだめだ。
私は、家族に愛されたかったんだ。
でも私の言う『家族』には、誠おばさんも入っていると思うんだ。
それもこの一件で気が付いたこと。
私は家族の愛を確認したかった。
愛してくれない父親を憎んで。
その苦しみを紛らわすために、あんなろくでもない男血がつながっているだけで、私とは何の関係もないなんて言って。
そんな私が、人に愛されるわけがない。