イジメ返し―連鎖する復讐―
「なに?」

ノエルはあたしの方を見ずに化粧ポーチを取り出して化粧直しを始める。

「今日の試合の反省と今後の対策、みんなで考えたいんだけど」

「……は?」

ノエルの声は不機嫌そうだった。

「負けちゃったけど、僅差だったし。反省点とか今後の課題を話し合っておけば次は勝てると思うんだ」

「ふーん。じゃ、一人でやったら?」

「一人でって……。バスケはチームでやるスポーツだしみんなで――」

あたしの言葉を遮るようにノエルはファンデ―ションの蓋を音を立ててしめた。

「――あのさ、そもそもアンタレギュラーじゃないじゃん」

めんどくさそうに溜息をつきこちらに目を向けるノエル。

「今日は人がいなくてたまたまフル出場だったけど、瑠偉(るい)が戻ってきたらアンタはレギュラーから外れるんだし、そんな頑張んなくていいって」

「でも――」

「つーか、あと3か月で引退だし。なあなあでやってればよくない?」

「あと3か月だからこそ全力でやりたいの」

「あっつー、マジ熱いわー、この女」

ノエルの言葉に、周りにいた同級生のチームメイトがノエルの言葉に同調するようにクスクスと笑う。

「とりあえず、今日は解散!!はい、これは部長命令でーす!!」

結局、ノエルは他のチームメイトに声をかけてさっさと荷物をまとめて帰っていった。

ノエルのやる気のなさは今に始まったことじゃない。あたしとノエルの間に温度差があるのは知っていたけどやっぱりちょっと寂しい。

一人残されたあたしは小さく息を吐き、職員室にいる顧問の元へ向かった。
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