魔王に見初められて…
魔王との出逢い
「おい、ここでいい」
克樹は運転手の村井に言う。
「はい、かしこまりました」
村井がドアを開ける。
「ん。今日はもういいから。ご苦労さん」
「はい、何かありましたら連絡を……」
後ろ手に手を振り、愛しくて堪らない恋人・結愛の元へ向かう。

駅前に結愛がスマホと周りをキョロキョロしながら、待っていた。
その姿に自然と笑顔になる。

「結愛、お待たせ」
「あ、克樹!」
タタタタ……っと駆けてくる結愛。
「ごめんね、遅くなった」
「ううん、社長さんは忙しいもんね…。
今日、大丈夫だった?デート」
「うん、もちろん!
てか、俺が会いたいし…!」
そう言って、結愛の頬を撫でる克樹。
結愛は、その大きな手に頬を擦り寄せた。

「可愛い…結愛…」
「克樹、行こう」
「うん…」
結愛の指に絡めるように手を繋ぐ、克樹。
それを握り返す結愛だった。

一緒に食事をして、少し高台の公園のベンチに座る。
いつもの二人のデート。
「はい、結愛」
コーヒーを渡す。
「ありがとう」
受け取り、一口飲んだ結愛。
心なしか元気のない。

「結愛?どうしたの?」
頭を撫でながら、結愛の顔を覗き込む。
「なんか…寂しいね……
この後はもうお別れだから。最近、凄く寂しくて……。離れたくないなって」
「結愛?」
「……あ…!違うの!困らせるつもりなんて、ないの…ごめんなさい…!」
「………だったら、一緒に住む?」
「え?」
「ほんとはもっと早く一緒に住もうって言いたかったんだ……でもまだ付き合って三ヶ月位だし、さすがにひくかなって……」
「克樹…」


「俺はね…出逢ったあの日から、もう既に離れたくなかったよ……?
だから……一緒に住もう!」

結愛は出逢ったあの日を思い出していた。

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