魔王に見初められて…
克樹は、あるヤクザ組織の若頭だ。
まだ28歳ながら、次期組長と言われる程の組員からの人望と賢さを兼ね備え、尚且つ精神的にも肉体的にも破壊的な強さがある。

そんな克樹とごく普通のOLである、結愛が出逢ったのはある意味“運命”と言っていいだろう。

「あーもうこんなに遅くなってる……」
その日、残業だったこともあり、コンビニでパンを二つ買って駅に向かった結愛。
駅前の道端でうずくって倒れた、克樹を見つける。
引っ込み思案なクセに、困ってる人を見るとほっておけない結愛。
克樹に声をかけた。
「あ、あの…大丈夫ですか?
体調悪いなら、救急車を………」
と言って、スマホを取り出そうとするとその手をガシッと掴まれた。

「え……」
「いらねぇ…腹減って、動けねぇだけだから…」
「あ…そうなんですね……じゃあ…
あ、これ、どうぞ?」
持っていたパンを袋ごと渡した。

「は?でもこれ…アンタのだろ?」
ここで克樹の顔を見た結愛は、心臓がドクンと大きくなったのを感じた。

か、カッコいい………

「あ…いえ…わ、私は別に食べなくても大丈夫なので……」
顔を真っ赤にして、俯く結愛。
もう心臓は、バクバクだ。
とにかくこのドキドキを悟られないようにと、少し微笑んで、
「ほんとに、私は大丈夫ですから、どうぞ!」
と克樹の膝の上に置いた、結愛。

その時、克樹の目が大きく見開かれた。

「じ、じゃあ…私は……」
と去ろうとする。
再びガシッと手を掴まれた。


「だったら、一緒食べよ?」
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