魔王に見初められて…
車に乗り込むと、克樹に膝の上に跨がるように指示された結愛。
「え?ダメだよ!シートベルトしないと……」
「は?結愛が、悪いんだよ。俺に嫉妬させるから。
もう、わかってるでしょ?
嫉妬したら、俺がどうなるか。
早く!!」
いつもの優しい克樹ではない。
微笑んでいるのに、瞳の奥は黒く澱んでいるのだ。
ここで口答えなんて、できるわけがなかった。

ゆっくり克樹の膝の上に跨がった。
克樹を少し見下ろす。
「結愛…可愛い~。
次はキスだよ?
して?」
「え?私から?」
「そう…結愛から!」
「そんなこと……」
「できるでしょ?早く!!」

怖い…………

「うん…
ンン………」
「………次は…どうしようかなぁ…」
「え?もう…許して……」
「フフ…もっと懇願して?
克樹……許して…?って!」
「克樹……お願……許して…」
「可愛い…許したくないけど、許しちゃうんだよな…
結愛は、ほんとズルいなぁ」

怖い…………

「まぁ、でも…さっきの男は許さないよ」

「え……」

「触ってたよね?結愛の頬」
「あ、あれは!目にゴミが入って、自分じゃ取れなくて湯田さんが取ろうとしてくれただけだよ?」
「わかんないじゃん!下心あるかもしれないでしょ?」
「そんなことないよ」
「どうして、そう言えんだよ?」
「それは…
でも、どうするの?湯田さんのこと」
「そうだな…とりあえず、俺達の前から消えてもらわないとな……
目障りでしかたがない!」
「消えてって、どうゆう……」
「言葉、そのままの意味だよ?」

結愛はまた、克樹の闇を見た。
樹理の時のように、克樹が克樹でない別人に見えていた。

怖い…………
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