幽霊でも君を愛する
「それなら早く連絡くらいしてくれよなぁー!!
 この日だけでも休みならバイト入れたのにぃー!!」

蔵刃は、奨学金の支えがあって大学生活を謳歌できる。しかし、奨学金は言ってしまえば『借金』とほぼ変わらない。だから早めに手を打っておかないと、泣くのは自分自身になってしまう。
だから蔵刃は、バイトをいくつも掛け持ちしている。それこそ、私でも今彼がどのバイトを掛け持ちしているのか、何処でバイトをしているのかも分からない程に。
ほんのちょっと前は、「内職とかやってみようかな」なんて考えを漏らしていた。俺の執筆活動も、言ってしまえば内職やテレワークに当てはまるのかもしれないけど。
私が大学に払っているお金は、ほぼ印税。そして今でも、新作を綴り続けている。何故なら作品が忘れらされるスピードが早いからだ。当然そうなれば、本の売り上げが落ちて、印税も減っていく。
それに、牡丹との幸せな時間を確保する為にも、自分にできるお金稼ぎの方法に時間を注ぎ込むしかない。だが、その機会を奪われたショックが大きいのは、私でも共感できる。

「・・・蔵刃、じゃあせっかくだから、近くのカフェでランチでもどうだ?
 それくらい私が奢ってあげるからさ、蔵刃も時々休んだ方がいい。」

私がそう言いながらリュックを担ぐと、蔵刃の目が一気に輝き始めた。・・・多分本人も、『ソレ』が狙いだったんだろう。
蔵刃はすぐさま卓上の荷物をカバンに押し込み、スマホでオススメのカフェを探る。彼はSNSで常に流行を探し回っているから、こうゆう時には頼りになる。
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