幽霊でも君を愛する
第十六章 交渉成立
「・・・・・うん。
 三楼さんの話は何となくだけど理解できた。
 でも私、成仏なんてできるの?」

「三楼の力を甘く見ない方がいいぞ。三楼は貴女以外にも、幾多もの幽霊を成仏させた実績があ
 る。・・・まぁ、『交渉』を飲んでくれた人限定だけど。」

牡丹は、いつの間にか戸棚に入れてあったクッキー缶を持って来て、テーブルに置き蓋を開けた。まだだいぶ残っている、そもそもこんな物あったっけ?
彼女は一番多く残っている抹茶クッキーを手に取り、ポリポリと食べ始める。もうだいぶ湿気っているのか、食べている時の音が若干おかしい気がする。
ユキちゃんは、恐る恐るクッキー缶に手を伸ばす。多分、自分も食べられるか試してみたいんだろう。彼女が手に取ったのは、ドライイチゴを混ぜてるクッキー。
そしてユキちゃんは、手に持ったクッキーに思い切り噛みつく。すると、『サクッ』という音が確かに聞こえた。もうユキちゃんは、完全な〈灯籠〉になっていた。
ドライイチゴが酸っぱいのか、久しぶりに物を食べたせいか、彼女の口はお婆ちゃんの様にシワシワだった。
それにしても、まだ昨日出会ったばかりの霊を〈灯籠〉化させるなんて、牡丹の影響力はとんでもなく凄まじいものを感じる。
・・・いや、年月を重ねる毎に増している気がする。私がまだ6歳の頃、初めて牡丹と出会った時は、こんな絶大な効果を持っていなかった筈。
何故牡丹の力がこれほどにまで増しているのか、それは私にも、多分本人にも分からない。ただ、『取材』が捗るのは言うまでもない。
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