【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 ハンカチを貸したマリアのそばで、アルフレッドは雷にでも打たれたように固まっていた。
 瞳はプリシラに釘付けで、マリアの呼びかけに三度目でようやく気づく有様。

 南国の花を観賞するあいだも上の空だったので、彼の体調を案じたマリアは早々に予定を切りあげた。
 本当は、花の色や香りにかこつけて会話がしたかったのに。

 たとえば、花よりも君の方が綺麗だ、とか。
 どんなに良い香りでも、君ほど夢中にさせるものはない、とか。
 社交辞令でも何でもいいから言ってほしかった。

 良くも悪くも実直なアルフレッドが相手では、花の前で百年待っても、そんな言葉は聞けないと分かっていた。けれど、マリアは期待した。

 いつかアルフレッドが、自分にだけ特別な言葉をかけてくれることを――。

『――マリアヴェーラ・ジステッドとの婚約を破棄する!』

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