【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 だが、今日のマリアは令嬢である前に、ただの恋する乙女である。

 小ぶりなハンドバッグを手に通し、歩きやすい革のヒール靴を履いて馬車に乗り込む。
 いつもの癖で侍女と着替えも連れてきたが、今日の出番はないだろう。

 青空広場のまえで客車を降りたマリアは、一人きりで待ち合わせ場所の時計台を目指した。
 広場の中央にデンとかまえた木造の白い建物は、遠くからでも分かりやすい。

 迷うことなく進んで行ったが、広場への入り口で自然に足が止まる。

「なぜ、こんなにも人が?」

 広場には若い男女が大勢いた。

 女性たちは見目が華やかな装いで、男性たちも着慣れていなさそうな上等の衣服で、時計台を包囲するように立っている。
 その周囲を取り巻くように人の流れができていて、建物に近づけなくて困っている人の姿も見える。

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