【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「失礼ながら、お父様。婚約破棄されてすぐにレイノルド様との婚約を発表すれば、王子であれば誰でもいいのかと公爵家がそしられますわ。ご一考を」
「選べる立場にあると思うのか、マリアヴェーラ。お前らしくない。王妃殿下のご厚情を無下にするのか!」
「ですが……」
「ジステッド公爵」

 怒鳴る父を止めたのは、レイノルドだった。
 彼は、萎縮するマリアの方は見ずに意見する。

「縁談は王妃の発案のように書かれているが、マリアヴェーラ殿に求婚したのは私自身だ。彼女の決心がつくまで考えてもらってかまわない。本日はこれにて失礼する」

 立ち上がったレイノルドは、マリアの横を通りすがら「気が向いたら返事をくれ」と言い残して去って行った。
 つづけて、苛立った父が「みっともない姿を殿下にさらすな」とマリアに当てこすって部屋を出て行った。

 応接間に取り残されたマリアは、ふと思う。
 レイノルドは、最後まで泣き腫らした顔を見ないようにしてくれた、と。
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