【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 几帳面な側近の字で記されていたのは、レイノルドと逢える機会の喪失だった。

「理由は、第二王子殿下が体調を崩して、伏せっておられるため……大変だわ! 急いで出掛けます。服装はこのままでいいから、髪だけセットして上着を準備してちょうだい」

 マリアは、大急ぎで支度をととのえて、公爵家の馬車に飛び乗った。
 馭者に頼んで、できるだけ速く宮殿まで走ってもらう。
 流れるように過ぎ去る景色を、両手をきゅっと握ってながめた。

(預言を聞いた日に、一人で帰ってきたわたくしの馬鹿。どうして、レイノルド様をお側で支えようと思わなかったの!)

 門番に事情を説明して、なかに入れてもらう。
 宮殿のまえで馬車を降りると、駆けつけてきた眼鏡の側近が一礼した。

「ようこそおいでくださいました、ジステッド公爵令嬢。急用とのことですが、ご用件は」
「レイノルド様が体調を崩されていると聞いて、いてもたってもいられませんでしたの。お部屋まで案内してくださいますか?」

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