【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「分かりました」
「そうだろう。受け入れがたいのは、重々承知だが――って、え?」
「婚約破棄を承知したと申し上げたのです」

 動揺をみせるアルフレッドに、マリアは高嶺の花らしく鮮やかに笑いかけた。

「わたくしでは、殿下のお心を満たせませんでしたこと、心よりお詫び申し上げます。どうかプリシラ嬢とお幸せに」

 大輪の薔薇をあしらったワンショルダードレスの裾を持ち上げて、マリアは悠々と会場をあとにした。
 パーティーホールを抜けた廊下には、寒風が吹いていた。長手袋をはめていても腕が寒い。それ以上に、今は心が寒々しかった。

(アルフレッド様が、他のご令嬢と恋に落ちるなんて……)

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