【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 父が立ち上がったので、マリアは我に返った。
 いつの間にか幕が下りて、中休憩の時間に入っていた。

「お父様。わたくしも、レイノルド様にご挨拶して参ります」

 マリアは、特等席に上がるための中央階段へと向かった。
 ボックス席から一度ロビーへ降りて、そこから奥まった通路へと入る。
 階段の下には鎧を身に着けた兵が立っていて、かなり厳重な雰囲気だ。
 第二王子の婚約者だと告げて、スカートを持ち上げて段に足をかけたところ、後方から声をかけられた。

「マリアヴェーラ様」

 振り向くとクレロが立っていた。
 黒髪を引き立てる緑色の宮廷服と手袋の白さが目を引く。どんな女性も目で追うような男性なのに、今日は誰も連れ歩いていないようだ。

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