【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 マリアは、肩にかかった髪をはらい、自然な流れで後ろを向く。これで、もしも涙がこぼれてしまっても、彼からは見えないだろう。
 だが、マリアの方からもレイノルドが見えないのは誤算だった。

「参加したのは、あんたの顔を見られるかもしれないと思って……」
「わたくしの顔?」

 驚いて振り返ると、いつの間にか立ち上がっていたレイノルドが間近にいて、顎に指をかけて上向かされる。
 一筋縄ではいかなそうな瞳が、マリアを大きく映し出していた。

「来て正解だった。あんたの可愛いところを見られたから」
「~~!」

 愛おしそうに目を細められて、マリアは真っ赤になってしまった。
 ちょうどそのときだ。どこからか、言い争うような声が聞こえたのは。

「なにかしら?」
< 25 / 368 >

この作品をシェア

pagetop