【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 あの日、自分が止めたはずの大粒の涙を、ぼろぼろにこぼして。
 兄が泣かせたと直感で分かった。そうでなければ、あんな風に手は差し伸べられなかった。

『いっそ、俺と婚約するか』

 彼女はびっくりしていた。ハートの木の前で声をかけた、十歳の頃を思い出させるような、かわいい表情で。
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