【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「あんた、王子の妃になるために生きてきたんだろ。俺も一応は王子だ。のけものの第二だが、利用価値はそれなりにある。兄貴ほど優しくはないが、近くに寄りつく女もいない。なぐさめくらいならしてやる」

 いきなりの自己アピールに、マリアは混乱した。
 公爵家のことを考えれば、申し出を受けるべきだ。
 だが、婚約破棄されたからと言って急にレイノルドに乗り換えられるほど、生半可な気持ちでアルフレッドを想っていたわけではない。

「――か、考えさせてくださいませ!」

 マリアは、レイノルドの手を払って早足でその場を離れた。

 両親への報告とか、アルフレッドから贈られた品の処分とか、自分の身の振り方とか、これから考えなければならないことが山ほどあるのに。

 マリアの心はみっともなくグラついていた。そして、公爵家の馬車で家に帰り着くまで、ぼんやりと時間を浪費してしまったのだった。
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