思い出の音。
それでも必死に自分の気持ちを抑えていた頃、突然あの日はやってくる。
「みんな、ごめん。俺……バンドを脱退したい」
いつもの貸しスタジオにバンドメンバー全員で集まった日、祐太はそう言ったんだ。
話を聞けば、彼はミュージシャンを目指すことを両親に反対され、進路を変更して県外の大学を目指すことにしたらしい。
その大学受験のために、音楽から離れることを決めたんだとか。
人の進路に口を出せるわけもなく、祐太は脱退。
残ったメンバーも、受験勉強に専念したいとまた1人と減っていき……ほどなくしてバンドは解散。
心にぽっかり穴があいたみたいだった。
支えられてきたものを失ったのだから。
『今まで七海ちゃんに支えられてたよ。
バンドを組んでくれて本当にありがとう。またいつかどこかで七海ちゃんの歌が聴けることを願ってる』
祐太から送られてきた最後のライン。
支えられていたのは私だけじゃない。
私も彼の支えてになっていたことが嬉しかった。
そして、私は思ったことがもうひとつ。
バンドが解散した今だったら、祐太に自分の想いを伝えてもいいんじゃないか、って。
でも……結局私は気持ちを伝えなかった。