むすんで、ひらいて、恋をして
「いないよ」



「……これも、即答かよ。残念な奴だな」



「うっさい! 私の勝手でしょ!」



「たとえば、誰かに、ドキドキしたりとか」



「しない」



「アリス、それ、マジで終わってる……」



「だから、そういうのはいらないの!」



次の瞬間、トンっとソファに座らされて、莉生の両手に閉じ込められた。



……へ?



莉生のサラサラの黒い髪が揺れて、甘い瞳に囚われる。



「ちょ、ちょっと、莉生、なに?」



莉生の指先がくいっと私の顎をつかんで、目をぱちくりさせる。



「俺ならアリスのこと、誰よりも幸せにする」



「は?」



目を最大限に見開いたまま停止していると、私の許可なく、心臓がばくんっと大きく跳ねる。



ちょっと、待って‼ 



心臓が誤作動‼



「ずっと、アリスのことだけが好きだったんだよ。ほかの男なんて相手にしないで、俺のことだけを見てればいい。もうさ、俺のものになって」



ぐっ……。



顔が、熱い。耳まで、熱い。



心臓がバクバクする……!



ぱくぱくと声なき声で反論していると、莉生がにやりと笑う。



「ちょっとはトキめいたか? トキメキ機能がぶっ壊れてる可哀そうな、ア、ネ、
キ」



むっかあああああ!



ムカつく! ムカつく! ムカつく!



この悪党め‼



忘れてた、こいつの破壊力のすごさ。



そうだった、目の前で甘く瞳を揺らしているのは、学年一のモテ男の水島莉生だっ
た。



くーっ、油断してた! 



義理の弟の莉生にドキつくとか、一生の不覚! 



「あれ、アリス、顔赤いけど?」



「全っ然、赤くないし! なんなら、全くドキドキしてないし!」



「へええ、耳まで赤く見えるのは、俺の気のせいか」



まだ、にやにやと笑っている莉生をじろっと睨む。



くっそ、悔しいいッ!



こうなったら、仕返ししてやる。



お姉さまをバカにすると、大変なことになるって、知らしめる。



姉としてのプライドにかけて、負けてたまるか!



床にすわっている莉生の正面にまわり、莉生の両肩をぐっとつかんだ。
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