なないろ。-short stories-
#Story 6




『夏祭りの時、浴衣着てきてね』

(かける)くんにそう言われたけど、恥ずかしくなって待ち合わせまで時間がないというのに躊躇(ちゅうちょ)してしまっています…

「お嬢様、失礼いたします」

コンコン、とドアをノックして入ってきたのは専属のメイドである飛鳥(あすか)さん。
高校2年生の私と歳が近いし、小さい頃から一緒だからなんでも話せちゃう。

「ねぇ、飛鳥さん。やっぱり浴衣着ていかなくちゃだめかな?」

ママから譲り受けた青地に金魚の描かれた浴衣に視線を落とす。

「せっかくお母さまからお譲りになった浴衣ですよ心結(こゆ)様がお召しにならずに誰が着るんですか?」

うぅ、だって付き合ってから初めてのお祭りで浴衣なんてハードルが高すぎるよ…

「それにその柄、心結さまにとてもお似合いですから」

…やっぱり恥ずかしいな。うん、でも時間ないし…今日だけだし、大丈夫だよね!


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