なないろ。-short stories-
あれから大急ぎで飛鳥さんに浴衣を着付けてもらって、待ち合わせ場所まで送ってもらったんだけど、
『やっぱり、心結様にとてもお似合いです、でも駆くんも男の子ですから…お気をつけください』
なんて言われて送り出されてしまった。
もう…そんなこと言われたら変に意識しちゃうじゃん…!
「心結、浴衣めっちゃかわいい」
「あ、ありがとう」
っ、ダメだ…意識しちゃう、…
「ん?どうかした?足痛いならどっか座って、」
「大丈夫!あ、私あれ食べてみたい!りんご飴!」
「食べたことないの?りんご飴」
「うん、そもそも夏祭りに来たのも初めてで。今までパパが許してくれなかったの」
本当お嬢様なんだね、なんて苦笑しながら一番大きいりんご飴を買ってくれた。
「俺にも一口ちょうだい」
顔を近づけられてあっという間に一口食べられてしまった。
駆くんの行動が、家を出る前に予習用にと思って読んできた少女漫画の一場面と重なって思わず赤面する。
「ん〜うまっ。あ、そろそろ花火始まるみたいだよ」
俺さ、穴場知ってるんだよね、二人きりでみられるところ
そう言ってにこっと笑う姿にさらに顔が熱くなる。
そんな私にお構いなく、恋人繋ぎをして人混みの中を進んでいく駆くんの背中を見て繋いだ手に小さく力を込めた。