約束
「ね、快」


ゆっくりと、濡れた黒曜石の瞳が私の瞳と交差する。


「嘘でもいいから、好きだったって言って?」


「……今だって」


「ううん、好きだったって、それでいいの。……それでいいんだ」


あなたのその声が、言葉が、何よりの手向けになるだろう。


あなたの未来を後押しする、過去の記憶になるだろう。


私は、生きているあなただけが歩める道を大切にしたい。


「海未……」


温度を感じるはずがない快の手が、燃えるように熱く感じた。


「……好きだった」


快の涙と私の涙が混ざり合い、夕焼けを呑み込んで床に落ちる。


窓から吹いた風が、私の髪を攫った。


この一瞬が、永遠に続けばいいのに。


心の片隅が、泣いていた。
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