約束
「海未、俺が死ぬ時は必ずお前が迎えに来い」


ぶわりと溢れた涙が、視界を橙に包んだ。


あぁ、それはなんて幸せな約束だろう。


死にゆく私に、彼はまだ未来をくれるのだ。


「約束する」


小指を絡ませ、快の温度を焼き付ける。


叶うように。


忘れないように。


願わくば、その約束が果たされるのがずっと先でありますように。


全ての音が遠のき、網膜に映る色彩が失われていく。


その風の中で、私はただ愛おしい約束を握り締めた。


最後に落ちた涙は、とても優しい思い出を映していた。
< 13 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop