7歳の侯爵夫人

15

「コンスタンスッ!!!」

俺は跳ね飛ばされた彼女に走り寄った。
彼女は頭から血を流し、道路脇に横たわっている。
彼女の息と胸の動きを確認し、生きていることはわかった。

ああ、良かった…。
彼女は、生きている。
俺は自分の震える手を励まし、彼女の頬に手を添えた。

どこを打っているかわからないため、すぐに抱き上げたり持ち上げたりするのは危険だ。
御者が邸から人を呼んできて、コンスタンスは担架に乗せられ、邸内に運び込まれた。

医師の診察が終わるまでの間、俺は祈り続けた。

どうか、どうか彼女の命を助けてください。
どうか、体も無事でありますように。

何の落ち度もない彼女が不幸な結婚をした挙句、夫の元恋人を庇ってどうにかなってしまうなど、そんなこと、絶対にあってはならない。

もしも叶うなら、どうか俺を身代わりにー。


幸い、というか奇跡的に、コンスタンスは擦り傷程度の軽傷で済んだ。
馬車のスピードが遅く、彼女自身の体の柔らかさも手伝ったのだろうと言う。
俺には馬車に跳ね飛ばされて宙に舞ったように見えたが、実際は彼女自身が馬車を避けるように飛び退いたのかもしれない。
後でコンスタンスの兄エリアスに聞いた話では、彼女は今でこそお淑やかな貴婦人だが、少女時代からかなり身体能力は高かったそうだから。
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