7歳の侯爵夫人
実は数日前に娘に会いにヒース侯爵邸に行った時、娘が興奮して話していたことを思い出したのだ。

「コニーがどうしてパレードを見たいか知ってる?あの子、言ってたわ。本当は最初から貴方がその日仕事で居ないのなんてわかってたんですって。だっていくら子供だって、近衛騎士の夫が成婚式のパレードに出るくらい、わかっているでしょう?だからね…?」
「はぁ…」
義母の言わんとすることがわからず、オレリアンは首を傾げた。

「あの子がパレードを見たいって駄々をこねていたのは、貴方が見たかったからなのよ?」
「…私を?」
「ええ。まぁ、パレードの警護くらいに思っていたのでしょうけどね。だから近衛騎士はパレードを先導するお役目なのよって教えてあげたら、コニーったら目を輝かせてね。絶対貴方の凛々しい騎士姿を見るんだって、それはもう張り切っちゃって。あの子、本当に貴方が大好きなのね?オレリアン」
うふふ…、と公爵夫人は口に手をやって笑った。

「…そうだったんですか…」
話を聞いたオレリアンは、頬を赤く染め、嬉しそうに微笑んだ。
その美青年の笑顔に、公爵夫人も、周りで聞いていた公爵と義兄エリアスも、思わず見惚れていた。
思えば、3人が心の底からオレリアンを娘婿として認めたのは、この時だったのかもしれない。

そんなことを思い出しながら、夫人は輝く笑顔で夫に手を振る娘を、微笑ましく見つめた。
そしてその手を振る先に目をやると、オレリアンもまた、馬上から妻を愛おしそうに見つめていた。
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