7歳の侯爵夫人

3

「父上、このこと、フィリップ殿下には?」
エリアスは父ルーデル公爵にたずねた。

泣き疲れて眠ってしまったコンスタンスに付き添い母も部屋を出たので、今は父とエリアスの2人きりである。
父はほとんど正直な事実をコンスタンスに伝えていたが、あえて伏せていたこともあったように思う。
例えば、事故の理由。

コンスタンスはオレリアンの元恋人を庇って事故に遭ったが、公爵はその事実を話さなかった。

それから、フィリップがコンスタンスを側妃に望んでいる事実。
それにはオレリアンの背景も、2人が1年間どのような夫婦だったのかも説明が必要だから割愛したのだろうが。
今夜のコンスタンスはもうキャパオーバーで、壊れてしまいそうなほどだから。

「もちろん殿下に話すつもりはない。また側妃になどと騒がれては厄介だ」
そう言ってルーデル公爵は眉間に皺を寄せた。
どうあっても、可愛い愛娘を側妃に差し出すなど、承服できるわけがない。

権力欲しさに娘を後宮に上げて王子を産ませたがる輩もいるだろうが、ルーデル公爵家にそんな必要はない。
ずっと昔から王家と縁を結び、一番の忠臣であったルーデル公爵家は、かえって王家に頼られる存在であるのだから。
公爵家に見限られないようにといつも気を使っているのは王家の方で、婚約解消後のコンスタンスに躍起になって結婚相手を探したのはそんな背景もある。
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