7歳の侯爵夫人

3

(思っていた以上に、誠実な方だった…)
コンスタンスはフッと表情を和らげた。
オレリアンと対面することを決めたのは自分だが、正直、とても緊張していたのだ。

コンスタンスにはここ4年近くの記憶が無い。
その間に起きた事実に衝撃を受け嘆き悲しんだが、2ヶ月かけてようやく受け入れ、前を向く気持ちになった。
ようやく書類上の夫とも向き合う覚悟を決めたのだ。

だが、そうは決めてもやはり不安で仕方がなかった。
彼がどんな人物かも、自分たちが夫婦としてどんな生活を送っていたのかも、何一つ覚えていないのだから。

コンスタンスは兄に、オレリアンと2人きりにしてくれるよう頼んだ。
そして兄が渋々部屋を出ると、コンスタンスは真っ直ぐにオレリアンを見つめた。

「侯爵様…、これからの、率直なお話しをさせていただいてもよろしいですか?」
「ええ、もちろん」
「侯爵様は、私と離縁をお望みですか?」

コンスタンスに問われて、オレリアンは驚いたように目を見開いた。
離縁の話が出るとは思っていたが、まさか、自分の望みを先に聞かれるとは思わなかったのだ。
だがオレリアンは気持ちを落ち着かせるよう静かに息を吐くと、こう言った。

「私は…、離縁は望んでいません。たしかに元々お互いが望んだ婚姻ではありませんが私は貴女との結婚生活に幸せを感じ始めていました。できることなら、このまま共に、死が2人を分かつまで、共にありたいと願っております。しかし、もし…、離縁がコンスタンス嬢の希望なら、私はそれに添いたいと思います」
「それが、王太子殿下の側妃になるための離縁としてでもですか?」
「……え……っ?」

オレリアンは驚き、一瞬絶句した。
やはり彼女は、例え側妃であっても王太子の側にいたいと願うのだろうか。
しかし、それが例え彼女の望みでも…。
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