7歳の侯爵夫人
「今日はガーベラですか」
一輪挿しに花を飾る主人を見て、リアは声をかけた。

「ええ。可愛いでしょう?」
花を見て微笑むコンスタンスに、リアの頬も思わず緩む。
リアから見ても、オレリアンの公爵家訪問が再開してからのコンスタンスは目に見えて明るくなった。
本人は気づいていないようだが、いつもオレリアンが訪ねてくる時間帯になると明らかにそわそわしている。

「いただくばかりでなんだか申し訳ないわ。何かお返しはできないかしら」
花を見つめながら、コンスタンスは首を傾げた。
オレリアンは毎日コンスタンスの顔を見られるだけで満足だと言って、お茶や夕食に誘っても邸に上がらないで帰って行く。
彼はお付き合いから…と言っていたが、普通の男女の付き合いとは一体どういうものなのだろう。
幼い頃から王太子と婚約していて、彼と会うのも全て王室からお膳立てされていたコンスタンスにはよくわからない。

「そうですねぇ。たとえば、お名前でも呼んで差し上げたらいかがですか?」
「お名前を?」
そう言えば15歳として目覚めたばかりの時、覚えていなかったとは言え、彼に名前を呼ぶなと告げた。
その後名前で呼ぶことを許して『コンスタンス嬢』と呼ばれているが、オレリアンのことは相変わらず『侯爵様』と呼んでいる。

「そう…、お名前…」
コンスタンスは考え込むように呟いた。
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