7歳の侯爵夫人
「私に隠さなくていいのよ、コンスタンス。貴女の不幸な結婚生活のことなら、すでに報告を受けて承知しているわ。新婚直後から貴女がヒース領に閉じ込められていたことも、夫の愛人を庇って事故に遭ったことも。早く何とかしたかったのだけれど、隣国との絡みもあって、フィリップの成婚が成るまでは迂闊に動けなかったのよ。わかってくれるわよね?コンスタンス」

夫の愛人…?
不穏な言葉を聞いたような気がしたが、コンスタンスは聞き流すことにした。
あの誠実な夫に愛人などいるわけがない。
王妃が何か誤解をしているなら、今はそれを解かなくてはならない。

「王妃様、本当に私たち夫婦は、」
「でも、貴女の記憶が戻っているなら話が早いわ」
王妃は悪戯っぽく笑い、コンスタンスの言葉を遮った。

「…?」
コンスタンスは訝し気に王妃を見つめる。

「ねぇ、コンスタンス。貴女が望むなら私の裁量で離縁を言い渡すことも出来るわ。侯爵側に非があるのは明らかだもの。それに、フィリップが貴女を側妃に望んでいることは知っているでしょう?元々貴女たちは想い合っていたのだから、それもいいと思うのよね。ただね、私は側妃より、貴女はヒース侯爵の夫人のままで公式寵姫になるのがいいと思うの」

「……えっ⁈」
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