7歳の侯爵夫人
「コニー、どうしても私の気持ちは受け入れてもらえぬのか?君が頷きさえすれば、ヒース侯爵を私の側近に取り立てることも考えよう」

コンスタンスはヒュッと息を吸い込んだ。
まさか、王太子からそんな言葉が出るなんて。

「…お恨みいたします、殿下。私たちの美しい思い出を、こんな形で壊すだなんて。私のことを想ってくださるなら、どうして静かに幸せを願ってはくださらなかったのですか?」
瞬時に表情を凍らせたコンスタンスを見て、フィリップは取り返しのつかない言葉を吐いたことを悟った。

「…コニー…」
コンスタンスに触れようと手を差し出せば、彼女は振り払うわけではなく、静かに一歩下がった。

切なげに、今にも泣き出しそうな顔でフィリップがコンスタンスを見下ろす。
コンスタンスは能面のように表情をなくしたまま、黙ってフィリップを見つめ返した。
どちらも声を発することなく、お互いの出方を探り合う。
だが、その静寂を破ったのは、王妃の声だった。
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