7歳の侯爵夫人

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そうして私は侯爵領の邸宅で暮らすことになり、王都で暮らすオレリアン様とは別居生活になりました。

最初の頃こそオレリアン様から王都の様子を知らせるお手紙が届きましたが、それも、すぐに途絶えました。
でも、長閑な田園風景が広がる侯爵領の景色は、たしかに私の心を癒してくれました。

侯爵邸の使用人たちは皆オレリアン様の伯父さまに仕えていた人たちでしたが、皆親切で優しく、何もわからない私にあたたかく接してくれました。
だから、彼からお手紙が届かなくとも、私はこちらの様子を書き送り続けることにしました。
読んでくださるかはわかりませんが、私がそうしたいと思ったのです。

それから、積極的に使用人や領民たちに関わり、領政に参加し、慰問なども行おうと思いました。
それは、私のようなキズモノを押し付けられたオレリアン様に、せめて少しでも恩返しがしたいと思ったこともあります。
それからもしかしたら、少しでも侯爵夫人として認めて欲しいという気持ちもあったのかもしれません。

使用人や領民たちと関わるうちに知ったのは、やはりオレリアン様が優しい方だということでした。
近衛騎士のお仕事が忙しいオレリアン様は滅多に領地に出向きませんが、それでも領民たちは彼を慕っているようでした。
それは、代理を通じてでも、彼が善政を敷いているからに他なりません。

オレリアン様は、元は継ぐ家もなく、功績を挙げて騎士爵を得た方だとも伺っております。
きっと私の旦那様は、努力家で、思いやりのある、素晴らしい方なのでしょう。
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