7歳の侯爵夫人
回想、オレリアン

1

「ねぇ旦那様!あれは何?」
「ああ、あれは窯だよ。陶器を焼いているんだ」

「ねぇ、あれは?あれは何の畑?」
「あれはコーンだよ。この辺りのコーンは甘くて美味しいんだ。これからたくさん食べられるよ」
「ほんと⁇」
「こら、危ない。落ちるぞ」

コンスタンスは馬車の窓から乗り出さんばかりに外の風景を眺めている。
そんな彼女を見ている俺はさっきからハラハラし通しだ。
だが、好奇心で目をキラキラ輝かせてはしゃいでいる彼女を見ていると、自然と頬が緩む。

明け方王都を出た俺たちの馬車は、なんとか暗くなる前にヒース侯爵領に入った。
領に入ったことを教えてやると、コンスタンスは窓に貼り付いてなんだかんだと質問してくる。
さっきまで俺に寄りかかって眠っていたくせに、元気なものだ。

今向かっているヒース領の邸宅の周りには、美しい田園風景が広がっている。
少し奥に行けば森や湖もあり、小さな街もある。

ここは、彼女が1年間暮らした場所である。
記憶が戻らないまでも、楽しんで過ごしてくれればいい、と思う。

こうして俺が領地に向かうのは3ヶ月ぶりだ。
前回来た時には、ここから王都に戻る時、1年間領地暮らしをしていた妻コンスタンスを伴った。

今回再びコンスタンスを伴って戻るが、侯爵邸の使用人たちはどんな反応をするだろうか。
皆、あまりにも変わってしまった侯爵夫人に驚くだろうか。

隣ではしゃぐ妻の横顔を見ながら、俺はあまりにも変化の大きかったここ数年間に思いを馳せていた。
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