未来の種ーafter storyー
「…ううん。無事に産まれたならいいんだよ。退院したらいっぱい会えるから。」

そうだ。感染症予防のため、優とはここでしばらくお別れだ。退院する日まで。

「この後、新生児室のガラス越しに対面できる。その後は帰ってからな。」

「ホント⁉︎ やった! ありがとう!」

「じゃあ美衣子、あと5分だけ、この廊下は2人っきりにする。マスクは取るな。」

そう言って、私達を2人っきりにしてくれた。

「ミイ、産んでくれてありがとうな。
体、どうだ? お腹痛いか?」

「まだ麻酔が効いてるから、感覚ないの。
麻酔が切れて、起き上がれるようになるまで、赤ちゃんは新生児室にいるんだって。
もう、早く会いたいわ。」

「無理するなよ。腹切ってるんだから。
中に入れたら、俺も手伝えるのにな。」

「ねぇ、それより一番大切なこと。」

「え?」

「名前よ。ずっと名前なしじゃ可哀想。」

「そうだな。
……でも、美衣子の中では決まってるんだろう? 
俺は女の子の名前担当だったからってだけじゃなくて、美衣子の決めた名前が良いんだ。
だから…」
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