異世界で先生になりました~ちびっこに癒されているので聖女待遇なんて必要ありませんっ!~
「何か文句でも? ……ああ、そろそろリーナが目を覚ますわ。レイ、様子を見て来てくれる?」

「分かりました。まあ、どうせ起きてすぐにルリ様にくっついてると思いますよ」

「そんなに懐いたのね」

「それはもう。夕食の際にでも、リーナの様子を見れば納得しますよ」

エレオノーラは苦笑して、楽しみだわ、とだけ返した。

レイモンドが退出すると、エレオノーラは少し冷めた紅茶を手に取り、難しい顔をする。

「あの様子だと、少し心配だけれど……。でも、子どもたちの事は本当に可愛がっているみたいだったわね」

子ども達の事を語るルリの姿を思い出し、表情を和らげ、ふっと笑みを溢した。

「それに、あれも、なかなか嬉しい話だったわ。ふふっ。あの子、気に入ったわ」

侯爵夫人の笑みを見て、扉に控えていたマーサは、また何か悪いことを考えているなと溜め息をついた。



「るり、おはよう」

「おはよう、リーナちゃん。よく眠れた?」

エレオノーラさん(さすがに様付けで呼ぼうかと思ったけど、さん付けで良いわよと言われたので従うことにした)との話を終えリーナちゃんの部屋に戻ると、ちょうど目が覚めた所だった。

「ん、なんか、すごくよくねむれた」

「今日はいつもよりもグッスリでしたね。目覚めも宜しいみたいで」

マリアさんが驚きつつも嬉しそうに言った。

あー寝起きに泣き叫ぶ子っているよね。リーナちゃん、そのタイプなのね。

「さあ、夕食まではまだ時間あるし、私と一緒に遊ぼう? それか、お散歩する?」

「! おそと、おはなみたい」

「うん、素敵! 立派な庭園だったし、リーナちゃんに案内してほしいな。どんなお花が咲いてるか、教えてくれる?」

「うんっ!」

お花が好きなのか。

天使のような外見で花好きなんて乙女力高いわー。

私なんて、子ども達とオオバコで草相撲したり、アサガオで色水遊びしたりが精々だわ。

男の人から花束をもらったこともないしね……。

リーナちゃんとマリアさんと一緒に庭園に出ると、一度見たとは言え、その広大な土地と種類の豊富な花々に圧倒される。

リーナちゃんは本当に花が好きなようで、名前だけでなく、ハチミツになるだとか、薬に使われるだとか、そんな知識も見せてくれて驚かされた。

庭師のおじいちゃんとも仲良しで、まるで可愛がられている孫のようだった。

毎日のように通っているのを見て、おじいちゃんが少しずつ距離を近付けたらしい。

粘り勝ちだね。

それにしても、異世界とは言え、意外と見知ったものや聞いたことのある花が多い。

名前もほとんど同じ。

リーナちゃんを見習って、少しは花の名前でも覚えようかしら。

……元の世界に、戻ったら、ね。
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