異世界で先生になりました~ちびっこに癒されているので聖女待遇なんて必要ありませんっ!~
「へえ、そんなことが」

「貴方にも見せたかったわ。帰るのが遅いんだもの」

リリアナが眠り、静かに解散となった後、この屋敷の当主、エドワード=ラピスラズリは、王宮から戻った所を妻であるエレオノーラに部屋へと連れ込まれていた。

「通信魔術で粗方聞いていたが、なかなか良いお嬢さんのようだ。それに、面白いことを考える」

エドワードにとっても、リリアナへの評価、カミシバイの作成、チキョウダイの関係など、興味を惹かれることばかりだった。

またその人柄に、普段滅多に他人に本心を見せない目の前の女性が、あっさりと心を許したことの重大さを、エドワードは分かっていた。

「私は、リーナは君似だといつも言っていたね」

「処世術の一つよ。でも、あの子には調子を崩されちゃってね。それなのに、ちっとも嫌じゃないの」

膝の上の、柔かな温かさを思い出して、エレオノーラから自然と笑みが溢れる。

「君にそんな顔をさせるなんてな。嫉妬してしまうよ」

「あら、またそんなこと言って。でも、絶対貴方も気に入るはずよ。私、何がなんでもルリに家庭教師になってほしいわ」

「はは。これは逃げられそうもないな。ルリ嬢に同情するよ」





「まさか、あんなに喜んでもらえるなんて」

今まで眠ったことのないような大きなベッドに入って、呟く。

「家庭教師、かぁ…」

明日は、侯爵様にご挨拶しないと。

こうして異世界に来て初めての夜は更けていった。
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