異世界で先生になりました~ちびっこに癒されているので聖女待遇なんて必要ありませんっ!~
「それにしても、ラピスラズリ家の皆さんは揃って綺麗な白金の髪ですね。お子様方は、お母様から受け継がれたんですね」

そして相手を誉めることも忘れない。

それに嘘ではない。

純日本人としては羨ましい程に、見事な金髪なのだ。

「あら、お上手ね。でも、私としては貴女の青みがかった銀髪も、とても綺麗だと思うわ」

「……え?」

私は元々髪の色素が薄い方だった。

でも、一般的に見たら黒髪だし、間違っても銀色になんて間違われるはずがない。

そんなまさか、と思いながらヘアクリップでまとめていた長い髪を下ろしてみる。

癖がついて少し波打った髪が、肩へ胸元へと落ちてきた。そしてその色は。

「……何、これ」

銀色だった。

まさか、でも異世界転移なんてしたんだもの、髪の色が変わるのも有りなのかもしれない。

じゃあ、眼は? 顔は?

「あ、の……。お話の途中に申し訳ないのですが、鏡を貸して頂けませんか?」

胸が早鐘を打つ。

全くの別人になっていたらと思うと、怖い。

「……ええ、構わないわ。マーサ」

エレオノーラさんが指示を出すと、マーサさんがすぐに手鏡を持って来てくれた。

お礼を言って受け取ったが、やはり確かめるのには勇気がいる。それでも、と決意し、鏡の中を覗くと――。

見慣れた自分の顔があった。

ただし、瞳は濃紺になっていた。

でも、黒と濃紺ならさほど変わらない。それに相貌は自分の物なのだ。

最悪の事態は免れたと、安堵からほっと息をつく。

「……少し落ち着いたかしら?」

麗しい声に、はっとする。

「あ、はい! すみません、急に変なこと言い出して……」

「いいのよ。……ああ、顔色も戻ってきたわね。手鏡を渡された時、蒼白だったのよ? 私、何かあなたを傷付けるようなこと言ったかしら。ごめんなさいね」

「いえ! 謝らないで下さい! 何でもないんです」

侯爵夫人に頭なんて下げさせたらいけないだろう。

冷静を取り戻した私は、咄嗟に何でもないと言った。

後になって思う。

もしこの時、眼と髪の色が変わった、と正直に告げていたら? 異世界から来たのだと、溢してしまっていたら?

未来は、変わっていただろうか。

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