秘密の一夜で、俺様御曹司の身ごもり妻になりました
 その時彼は視線だけで殺せるんじゃないかと思うくらい怒っていて近くで見ていた私も震え上がった。次の日、その男子生徒は退学。
 おそらく神崎さんが先生たちになにか言ったのだろう。
 処分がすぐに決まったもの。
 だから、彼だけは絶対に怒らせてはいけない。

 そんなことを考えていたら、神崎さんの声がしてハッと我に返った。
「……演技ってなにをおかしなことを言っている?」
 いつも余裕綽々としている彼が狼狽えているから驚いた。
「おかしなことって……」
 彼に聞き返そうとしたその時、病室の扉がガラガラッと開いて兄が入ってきた。
「お前、交通事故に遭った割に元気そうだな。出張先から慌てて戻ってきて損した」
 私をひと目見るなり兄は安堵した様子でフーッと息を吐く。
 その顔はどこか青白い。多分事故のことを聞いて急いで来てくれたのだろう。
 普段は冷たいがやはり兄なのね。
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