秘密の一夜で、俺様御曹司の身ごもり妻になりました
「あっ、うん。なんか来てもらっちゃってごめん」
 兄に謝りながら壁時計に目を向けると、時計の針は九時二十分を示していた。
 カーテンの隙間から日が差し込んでいるということは朝なのか。
 そうだ。仕事……!
「お兄ちゃん、悪いんだけど、事務所の方には今日休むって連絡しておいてくれない?」
 手を合わせて兄に頼んだら、変な顔をされた。
「は?」
「だから、お兄ちゃんの法律事務所の人に今日は行けないって連絡しておいて。私、スマホとか今どこにあるかわからないから」
 私がそう言い直したら、兄と神崎さんは神妙な面持ちで目を合わせた。
「紗和、今日が何日かわかる?」
 神崎さんの質問に少し首を傾げながら答える。
「なんでそんなこと聞くんです? 昨日が三月十日で神崎さんのおじいさんの誕生日パーティーがあったから、今日は三月十一日ですよ」
 昨日神崎さんのおじいさんに結婚を前提にお付き合いしていると挨拶したばかりだ。
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