推しの子を産んだらドラマのヒロインみたいに溺愛されています(…が前途多難です)
それではあの時身を引いた意味がなくなってしまう。私は唇をかんで、それからこういった。

「……そうだよ。だから、もう帰って!」

 私は雄飛の手を振りほどくと、店のドアを閉める。

「ごめんね、雄飛」

 後ろ手でカギをかけ、朝飛のもとへと急いだ。

「どうしたの、朝飛」

 怖い夢でも見たのだろうか。

目に涙をためた朝飛は一目散に駆け寄ってくる。

抱き上げて背中をトントンとたたくと安心したのか泣き止んだ。

「朝飛はおなかすいたかな? パンケーキ食べようか」

「うん、食べる」

「じゃあ、いこうね」

 二階の窓から下を覗くと、もう雄飛の姿はなかった。

私は朝飛を抱いて、店まで下りて行った。

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