推しの子を産んだらドラマのヒロインみたいに溺愛されています(…が前途多難です)

「ママ」

 朝飛の声にハッとして顔をあげた。

「どうしたの?」

「バス来た!」

 八時に登園バスが店の前に停まった。

大好きな先生がお迎えにきたので朝飛は嬉々として乗っていった。

その背中を見て複雑な気持ちになる。どんどんと自分の手から離れていくことがうれしくもあり寂しくもある。

 客足が落ち着き、ひと息つこうと思った十時過ぎ、店に一人の若い女性が入ってきた。

フードのついたスエットにデニムパンツというラフな格好だ。

「いらっしゃいませ」

「あのう。十二名なんですけど、入れますか?」

 遠慮がちに言う彼女に私は笑顔で答える。

「大丈夫ですよ、どうぞ」

「ありがとうございます。すぐ戻ってきますね」

 嬉しそうに出ていく彼女の背中を見送った。

それにしても十二名の団体客なんて珍しい。

私は外したばかりのエプロンを付け、キャップをかぶりなおした。
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