推しの子を産んだらドラマのヒロインみたいに溺愛されています(…が前途多難です)
到着すると住居部に置いてある荷物を運び出し、処分する家具には張り紙をした。

「これで終わりですか?」

「はい、終わり……ですね」

 私も我が家の荷物の少なさに驚いた。朝飛と二人、必要最低限の暮らしをしてきたので当たり前なのかもしれない。

「店の中のものは?」

「これはそのまま買ってもらう予定です。綺麗に使ってきたし、そのままの方が他の費用もかからないらしくて」

「売るんですか?」

「実はもう売買契約も済んでて、もうすぐ仲介業者の人が最終確認に来る予定なの」

 そうこうしているうちに店の前に白の軽自動車が止まった。

「どうも~サンライズ不動産です」

 この不動産屋さんを選んだ決め手は都内に本社があることだった。雄飛のマンションからも一駅と近く、数回通って契約を結んだ。

SNSでサーフィンとカフェオーナーというキーワードで売り出して貰ったら、思った以上に早く買い手が付いた。

思い出の詰まったこの店を手放すのは惜しいけれど、雄飛との生活は東京でしかできない。



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