それでも、精いっぱい恋をした。


野球部とサッカー部がけんかするみたいに声を張り合いながら練習している。

窓の外から見える光景を眺めていると「ぼんやりしてると怪我するぞ春希」と頭をぽかりと叩かれた。


「でもでもカッキー、旋盤むずかしすぎてわたしには手に負えねえよ」


家から通える距離に公立高校は7校ある。

そのなかで下から2番目に偏差値が低い工業高校に入学して2年経つけど、実習や課題研究の科目は大の苦手。

みんなからはなんで工業入ったんだよって思われている。仕方ねえじゃん頭悪いんだから…。


今日は補習で居残り。バカだからって理由じゃなくて、夏の暑い実習室で危険から身を守るために着せられている分厚い実習服を着てアーク溶接の授業を受けていた時に熱中症でぶっ倒れたことが原因。


あれははずかしかった。30人中女子4人の教室で、わたしは倒れるようなか弱いキャラじゃない。あとから散々クラスメイトたちに揶揄われて最悪の気分だった。

それでいてアーク溶接と旋盤の補習を受けさせられる羽目になるなんて。


はやく帰ってまんが読みたい。

だけど、わたしひとりのために放課後の時間を使って補習の時間をくれた機械科の先生たちのために、ちゃんとしよう。


バカでもわかるように説明しようとしてくれる先生たちに手取り足取り教わりながらなんとか時間いっぱい使って課題を終わらせることができた。

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