それでも、精いっぱい恋をした。
だけど嫌味はない。何もない。ただ素直に、すげーなっていう気持ちになる。
あかねくん。
きみの悩みは、やっぱりわたしには理解ができなそう。
それでも、ちょっと苦しいなあってときは、こうやって一緒にいたいかもしれない。
「そろそろ帰ろうかな」
「あ、うん」
やば、時間、すっかりわすれてた。
見つかったら完全アウト。いろいろアウト。あの付属高校の生徒を連れ回したとかレッドボーイのこととか…見つかった時のことを考えると胃が痛くなりそう。ならないけど。
悟られないように、だけどちょっといそいで、あかねくんにヘルメットを渡す。自分も今度こそちゃんと被る。
エンジンをかけると、おなかにまわった手が布をぎゅっと掴んだ。
夜風を浴びる。
迫ってくる別れの時間。
終わりがくるわたしたち。
再び会うこともないと思う。
だから、どうしてか、このままあかねくんの家がどっかに行っちゃえばいいのにって、へんてこなことを強く願った。
だけどまあ、当たり前だけど叶わなくて。
またねを言わずに、わたしたちは、そうするしかないみたいに手を振った。