それでも、精いっぱい恋をした。
仕方なく時計塔の下まで駆け寄る。
「や、やあ」
「やあ?」
「えっと、今日は、どこかに行くのでしょうか。レッドボーイ持ってきちゃったけど平気かな」
「あ、じゃあレッドボーイで行こ。恐竜博物館と水族館と映画、どれがいい?」
「えっ…」
なにその、デートみたいなメニュー…あかねくんもまんざらじゃねえんじゃ…。
携帯の画面にその3つを順番に映しだしてく。映画の候補は2つあるらしい。
ひとつはアクションが評判の洋画、もうひとつはゆったりしたアニメーション。映画は好きだしどっちも見たいと思っていたものだったからびっくりしたけど、でも、2時間あかねくんとしゃべらずスクリーンを見るのはもったいねえよな。
水族館も好きだけど、なんかちょっと本格的にデートっぽくてなんかやばい。
というわけで、恐竜博物館を選択。行ったことねーから楽しみ。
どこにあるのかだいたい把握して、あとはあかねくんにナビしてもらうことになった。レッドボーイに乗って、さあしゅっぱつ。
おなかの布をぎゅっとする手は変わらないのに、その袖口が私服なだけで、今日は今まででいちばん特別な気がした。
レッドボーイから降りてチケット売り場に行くまでの間であかねくんはジェラシックワールドが好きなことを知った。わたしも好きで、一番びっくりしたシーンまで合致したからびっくりだ。
恐竜にも歴史にも詳しくないわたしと、嫌味なくうんちくを楽しそうに話すあかねくん。
恐竜の種類は案内に書いてあることより彼の言葉のほうがわかりやすくてすごかったよ。
「あかねくんって何の先生になりたいの?なんの教科が得意?」
「一番得意とかないから、全部教えられるようにして、小学校の先生がいいかなって思ってる。でも高校の授業も楽しいから悩む」
「ほう…」