哀しみエンジン



「清水さ──」

「やっぱり若い子は、可愛いな」

「はいはい、そうですね」



俺の声に、服部先輩の声が被った。

もしかしたら、絆創膏を持っていそうな人物。

お目当ての人の名前を呼び掛けたが、思わず止めてしまった。

それは、2人のただならぬ雰囲気を感じて。

服部先輩は面倒見が良くて、愛想も良いが、顔の血色まではそこまで変わらない。

そんな人の頬が少し赤らんで、優しく微笑んでいて。

それと相反するように、清水さんの顔は拗ねているようにも見えるし、もしくは今にも泣き出しそうな切ない色をしていた。

──ああ。はいはい、そういうことね。

全てを察した。

清水さんのことを思えば、この状況は邪魔して彼女にとって、辛い場面を断ち切った方が良いのか。

しかし、邪魔をすることで、せっかくの2人の時間に水を差されたと思われてしまうのか。

悶々と考える。

──落ち着け自分。でも、よく考えてもみろよ。

本当に困っている時に駆け付けられた俺よりも、本人の気まぐれでしか来てくれない服部先輩のが、良いのだろうか。

ますます悶々とする。

それに感情は教えられなくても、知っている。

これは間違いない、アレだ。


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