政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 織田の令嬢との結婚がなくなったのなら、それもあり?

 ブレスレットに手を当てながらふとそう思ったものの、専務から辞めるように言われたのに、自分から会いに行くわけにはいかない。

 偶然を装って会社の前を歩いてみる?

 なんて思っていると、スマートホンが揺れた。

 見てみると登録されていない電話番号が表示されている。不審な電話には出ないと決めている。放置したまま見ていると留守番電話に録音されたようだ。

 念のために再生してみると、聞いた声が聞こえた。

『加郷だ。またすぐに掛けなおす』

 ええ? 加郷だったら出るんだった。

 残念に思いながら番号を登録して待っていると、早速電話が鳴った。

「もしもし、加郷?」

『よお紗空、久しぶりだな』

「加郷、今どこにいるの? 見たことない番号だけど」

『インドだよ』

「へえー、そういえばインドってIT国家だもんね」

『お前さ、実家にいるって本当なのか?』

「うん。そうだけど、どうして知ってるの?」

『ああ、ちょっとな。なにやってんだあいつ、ったく』
< 195 / 206 >

この作品をシェア

pagetop