政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 借金の返済を考えながら転職も視野に入れたけれど、調べれば調べるほど自分の今の待遇の良さが身に沁みた。今ここをクビになったりしたら、弟の留学の話は遠のくばかりだ。

 あの時、須王専務は私にあやまってくれて、仕事を任せてくれるようになったのに。私は期待を裏切った。申し訳ないし情けない。

 とにかく、まずはお詫びをしなければ。そう心に誓いコーヒーを載せたトレイを片手に専務室の扉を叩いた。

「失礼します」

 須王専務の机にコーヒーを置き、膝につくほど頭を下げた。

「専務、この度はほんとうに申し訳ありませんでした! 本当に、ほんとうに申し訳ありませんでした!」

「あぁ、その事なら」と専務の声が聞こえたけれど、その言葉を遮るように続けた。

 どうしても、どうしてもクビにはなれないから。

「今後このような事がないよう必死でがんばりますので、どうかどうかお願いします!私をクビにしないでください、アフリカでもアラスカでも何処に左遷されても行きます! ですから、だから、どうか、どうか」
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