幸せとはこの事か
紅幸「父さん、結婚するんだってさ」
私はほったらかしていた衣服を手に取りながら驚く。
おきな「そうなの?」
紅幸「1週間くらい前に父さん珍しく家にいると思ったらその報告だった」
おきな「…喜んであげた?」
紅幸「おう、喜んだ。来月から婚約者も一緒に住むらしいんだけど引っ越すらしくて」
おきな「どこに?」
紅幸「ここから少し離れて隣町」
おきな「…少し遠いね」
紅幸「父さんからお前も一緒に来ないか?って誘われたんだけど…断った」
おきな「…どうするの?」
紅幸「そう、だろうなって父さんから言われて、今まで苦労かけてすまなかったって謝られたよ。別に父さんが悪いわけじゃなかったのに。父さんは俺のために貯金貯めててくれてたみたいで高校卒業までは今の家で一人暮らしになる。結局1人のまんまだけどな」
おきな「…そっか。だから最近元気なかったんだね」
紅幸「そうだな。もうあと1週間もしないうちに父さんは婚約者と一緒に隣町だからな」
おきな「会ってないの?その人と」
紅幸「会った。優しそうな人で父さんのこと大好きみたいで綺麗な人だった。それに俺の事見るなり、父さんがいつも自慢してるからどんな子かなって思ってたけど自慢したくなるほどいい息子さんねって。言ってた。」
そう言う紅幸くんの目には涙が溜まっていた。私は思わず
おきな「…今は私しかいないから泣いてもいいんだよ」
紅幸くんはこっちを見るなり子供のように泣いた。
何を言うわけでもなくただ声を殺しながら泣いて泣いて、ただひたすら泣いた。きっとそれは、最後までお父さんに愛されてないと思ってたのに、お父さんは紅幸くんのことを自慢の息子だと周りにも言っており、これからのことも考えて貯金もしていてくれた。
それだけで紅幸くんは報われたんだろう。
紅幸「…俺、愛されてたんだね」
おきな「良かったね」
紅幸「うん…」
おきな「じゃあ、私のこと聞いて」
紅幸「?」
おきな「お父さんとお母さん、とっくの昔に離婚してたんだって」
紅幸「え?」
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