桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「でも、私の事なのに本人がそれを知らないなんて……」
それで「はい、分かりました」と納得しろという方が無理がある、私にだって自分の事を知る権利はあるはずなのに。
そう言いたくてベッドから起き上がろうとするが、匡介さんから優しくそれを阻止される。
「頼むから、無理をしないでくれ。俺はただ杏凛にゆっくり休んで欲しいだけだ」
そういう匡介さんの目は真剣で、それ以上は無理に聞くことも出来ず私は瞳を閉じるしかなかった。
さっきまで眠っていたから、目を閉じてもそう簡単に眠りにつくことは出来そうもない。それでもウトウトしていると、私の長い三つ編みを解いた髪に誰かが触れている事に気付いた。
優しい触れ方、その大きな手が匡介さんのものだということくらい目を閉じていても分かる。
「杏凛、君は必ず俺が守ってみせるから……」
ねえ、それはいったい何からなの? そう聞きたいのに、今それを聞くことは出来ない。
少しずつ夫婦としての距離は近付いているはずなのに、どうして私達にはどうも出来ない壁のようなものがあるんだろう?
こうして弾かれる度に、私達は形だけの夫婦だと思い知らされる。
胸の奥がギュウっと痛くなるのを感じながら、私は今ここにある匡介さんの温もりと優しさに甘えていることしか出来ずにいた。